私の青春、キュウソネコカミ。
ライブに行ってきました、寿司マーブルです。
先日書いた記事がなんか…なんかなったみたいですね。
ありがとうございます。トップはランダムになるのですか?不思議。
まだ見てない方はどうぞ見てください。
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4月13日、私はライブハウスにいた。
肌寒い空を抜けて会場に入ると、中では色とりどりのディッキを履いた若者、メイクをこしらえた金髪の女、妙齢の男性、女性、スマホをひたすらいじる人で溢れかえっていた。
チケットを渡す。
「今日はどちらのバンドが目当てですか?」
「あ…」
しばし悩んだ。
「…キュウソネコカミです。」
「はーい、どうぞー」
高校3年生で初めてキュウソネコカミに出会った。邦ロックという存在を知り、友達から「これはすしまちゃんみたいだね!」と教えてもらったのはファントムバイブレーション。講義中でも休み時間でも携帯を手放さない私にはお似合いの曲だった。
でもその時は「面白いな。」で済ませて、そこまで興味を持たなかった。
そこから時は流れ、大学1年生で再び運命的な出会いを果たす。
キュウソネコカミのメジャーデビュー一歩手前で出たミニアルバム。その中に入っていた「空心菜」という曲。永遠に空心菜をほめたたえるこの歌に私はひどくエモを感じてしまった。
くうしんさーい!油でいためただけなのにー!くうしんさーい!癖になっちゃうあの感じー!
意味はあるか。おそらくない。歌詞カードを読まないとなんて言ってるかわからない。CD音源でもわかる歌のへたくそさ。顔だってパッとしない。全員パッとしない。でも自分から好きになったのはキュウソネコカミが初めてだった。そこはかとない魅力を彼らに感じた。好きに理由なんてない。理由を見つけることが難しいくらいには好きになっていたのだ。
音楽を聴いて、初めてライブに行こうと思った。
忘れもしない。2014年7月19日 クラブクアトロで行われたDMCCツアー。
最初はチケットの買い方もわからず、グッズだけ買いに行ったんだ。チケットがなくても買うことができると知って、一人で電車に乗って名古屋に向かい、パルコのタワレコに一人で入って、少しだけ聞きかじったバンドの曲を恐る恐る聞いてちょっとだけライブキッズの気持ちに浸ったりした。所狭しとCDが並べられている。自分の知っているバンドを探し、展開されているバンドのCDを手に取って、キュウソネコカミのブースを見てサインを写真撮ったりして。
かなぶーん…しゃんぺ…ばにらず…棚を見ながらぶつぶつ呟く。
音楽だけの空間は幸せでしかなかった。
でも、慣れていないので貫禄のあるキッズが寄れば5m離れ、おどおどしているうちに居座るのを諦めて店を後にした。
しばらく外でスマホをいじっていると女の子が話しかけてきた。
彼女はライブキッズで、物販に来てライブにも行くらしい。たわいもない話をしながら物販開始時間を待った。
「すしまちゃんはライブに行かないの?」
「うーん…チケット持ってないんだ~」
「え!まだ間に合うよ!余ってる人いるって!探そ!」
余るってなんだ…当日券は完売してるぞ…
その時初めてTwitterがチケットのやり取りに使われていることを知る。
でも、うーん、と悩んでいるとリハの音が聞こえてきた。
ギターが荒っぽくギュイギュイと響く。つんざくキーボードの打ち付けるような音。
厚い扉の向こうで音が暴れまわっているのが聞こえた。
黒い一枚板の向こうが夢の世界だ。荒削りの感情を激動のビートに乗せて耳にぶち込みたい。オーディエンスの波に、汗にまみれて、叫ぶ、エモーショナルを解放する。
心臓が興奮で押しつぶされそうになった。全身がざわめくのを感じた。
行くしかない。夜に入っていた予定もキャンセルして必死でチケットを探した。
なんと、運よくチケットを手に入れることができた。
シャツとタオルをこしらえて、スタッフにチケットを手渡しドリンクチケットを大事に指で握りながら小さなライブハウスの中に入っていった。
ライブは本当に圧巻だった。
キュウソのライブはパフォーマンスが特徴的で、オーディエンスに飛び込むこともあればコスプレをしてマリオになりきることもあった。MCも軽快でヨコタさんとセイヤさんのトークがとにかく面白い。段ボールにファンの嫉み恨みを書き連ね一言で切り捨てる。潰された段ボールの上に乗り、オーディエンスがどんどん千切っていく。意味が分からない。でも最高だった。
ステージ上の彼らは紛れもなく「クズにもなりきれぬ中途な僕ら」の代弁者だった。
荒削りの音楽、へたくそな歌声、その不格好さが歌詞の泥臭さにエフェクトをかける。
中途半端な僕らは中途半端な音楽に飲み込まれ、ライブハウスは混沌に導かれる。
魂が動かされる。口角が上がりっぱなしで引きつってしまう。呼吸を忘れる。
人と人をかき分けて手を挙げて、息苦しさの中で精一杯に叫ぶ。
びりびりに破かれた段ボールに吐き出された呪詛をそうやって私たちは昇華していく。
そんなライブだったんだ。私が知っているキュウソは。
それから足繁くライブに通った。ツアーもフェスも行けるものは何でも行った。
2014年から2016年、私の大学生活はキュウソネコカミ中心と言っても過言じゃなった。
しかし持病が悪化し、立て続けに2回、ライブを途中で抜けることになった。
音が耳を執拗にかき混ぜて、閃光のようなライトに打ちのめされた。
人の群衆が恐怖に変わったとき、キュウソのライブを卒業することに決めた。
その時点でキュウソネコカミはちょっと雰囲気が変わっていた気もする。
あまり覚えていない。それからはなんとなくライブに行ったりした。
女王蜂との出会いもありながら、キュウソのことは気にしないようにしていた。
それから1年。
Zepp NagoyaでキュウソネコカミとSiMの対バン。「行く」しか選択肢はなかった。
今回はキュウソネコカミのツアーにSiMが呼ばれた形になる。キュウソが呼んだのはこれが初めてのことだ。SiM主催のフェスに出ていたこともあったので彼らにつながりがあるのは前から知っていた。
SiMも大好きだったから、対バンが名古屋で行われることに嬉しさをかみしめていた。
SiMはDPFも2回行った。あれは本当に良いフェスで、行けるならみんなに行ってほしい。今年はサンボマスターのライブが被ってしまったので行けそうにないけど…。
とにかくライブはハチャメチャに楽しい。彼らは箱が大きかろうが小さかろうが、フェスだろうが対バンだろうがワンマンだろうが常に150点のライブを見せてくれる。
今回もとにかく最高だった。MAHさんを見ている時、感覚で目玉が2㎝は飛び出ている。それだけ魅せられるし、本当にセクシーなんだ。歌う姿、声、言い方は悪いのかもしれないがストリップを見ているよなエロティシズムを感じる。歌う動作一つ一つに重みがある。いや…見ないとわからない。これがライブの良さなんだろうな。
彼らは今回も150点だった。
キュウソまで少し時間があく。私はヘドバンで脳みそがぶん回されてIQが5まで下がり、気を抜くと倒れそうな状態になっていた。
体調が悪くなって帰った過去を思い出しながら少し気がめいっていたのもあるんだろう。
音楽が止まり一気に照明が落とされた。
脳みそに血がぐぐ、と戻っていく。
あの頃の興奮と同じものを感じた。
キュウソはかなり緊張していたと思う。KMDT25の歌詞は間違えるし少しチューニングはずれているし、なんなら演奏もミスってた。
へたくそなのには変わりない。ただ、違和感があった。
前までは全力でやっての下手くそさというか、がむしゃらさがあった。彼らがジャンプをして届くキュウソネコカミの骨頂を見せてもらっていたような感覚。
今回はただ緊張して80%の力しか出せていない、そういった下手くそさだった。
あとなんかセイヤさんめっちゃ歌がうまくなっている…
前までは声が出ないことだってあったのに完全に出ている。下手くそとは言えないくらいには上手くなっていた。ボイトレしてたのは本当だったんだな。
知っている曲と知らない曲がセトリで組まれるようになってきていた。正直追えていたのがハッピーポンコツランドまでだったから、そこからはちゃんと聞けていない。
ライブの聞き方もあの時からだいぶ変わった。昔はシャツの色が変わるくらいに汗をかいて、最前で叫んでいたのに、今は後ろで見ている。大人見でもないけど。
私の熱量が変わったのか、キュウソが変わったのか。
おそらくどっちもだ。
社会のしがらみコーナーがなくなったこと、お願いシェンロンが歌われなくなっていたこと。少しずつセトリは変化していく。同じことはやってられない。
新曲を聞いた。彼らが歌いそうだなと思う曲だった。
面白い。でも、それってきっとみんな思ってることだ。耳元で社会に唾を吐きかけてくれたあの刺々しさはどこにいっちゃったんだよ。
この数年でいろんな優しさに触れたんだろう。自分たちが見たい景色を見ることだってできたんだろう。彼らはどこに進むんだろう。宙ぶらりんのまま、ぼんやりとした夢を追うのはきっと難しいことだろう。
追いつめられることがなくなったネズミは自問自答を始める。
キュウソの敵は猫でも社会でもない。
彼ら自身だ。
アンコールラストは「わかってんだよ」。去年の秋、一番つらかった時期に聞いた。
いい曲だと思った。大好きな曲だ。
嬉しい、寂しい、よくわからない気持ちを全部ぶつけて一緒に歌った。
音響にかき消されて誰にも聞こえないから、力任せに叫ぶように。
昔の自分に聞こえてるかな。ライブに自分の足で立ててるこの現状を見せてやりたい。
真面目な生き方はみ出したいけど 意気地なし
クズにもなりきれぬ中途な僕ら
ボロボロになってやっと気づいたよ ボロボロになってやっとわかったよ
あぁ僕はただ生きているだけだった 心を入れ替え立ち上がれ今
悔しい。キュウソにまっすぐに元気づけられてるなんて。
全部変わっちゃったんだよな。でも、それでいいのかもしれない。
キュウソも変わる。私も変わっていく。人間に一貫性なんて求めちゃいけない。
本当にいい曲なんだ。牙は丁寧に抜かれて優しいハムスターになっちゃったけど。
でも青春だったことには変わりない。行けて良かった。
キュウソネコカミ、今まで本当にありがとうございました。
いやなファンだよ…いや、もうファンじゃないのかもな…。
現場からは以上です。